海外へ旅行するためにエアチケットを購入したのですが、購入代金の内訳に、これまでなかった「国際観光旅客税」という項目が増えていました。これは何ですか?
出演: ・・・M社 経理部 まい
・・・顧問税理士
― M社 会議室にて ―
M社経理部まいと顧問税理士が、打ち合わせを行っています。
そういえば、今年のゴールデンウィークは10連休ですよね。
先生は、どうされるのですか?
そうですね。
世間では10連休のようですが、あいにくこの時期は税務申告件数が多く、日曜日以外に休む予定は、今のところありません。
大変ですね。
(苦笑)
御社は、10連休ですか?
そうなんです。
この機会に海外へ行こうと、先日エアチケットを購入したんですけど。
はい。
エアチケット代金に「国際観光旅客税」という項目で、1,000円が上乗せされていたんですよね。
この「国際観光旅客税」って何ですか?
平成30年度税制改正により、平成30年4月11日に成立した国際観光旅客税法により徴収される税です。おっしゃるとおり、これは平成31年1月以降の出国について例外を除き、出国1回につき1,000円が徴収されることとなっています。
国際観光旅客…?
国際観光旅客税法、です。
かつて流行語大賞にノミネートされた、“インバウンド”や“爆買い”などの言葉にもあるとおり、政府は国内の観光に力を入れて、観光立国を目指しています。
たとえば街中では、“Tax-Free”と書かれた垂れ幕や看板などが、大型店舗だけでなく、小型店舗でも見受けられるかと思います。これは海外からの観光客が、消費税の免税を受けられやすいように改正しているからです。このことをとっても、政府の思惑がお分かりいただけるのではないかと思います。
政府はこの観光立国の実現に向け、さらに観光客が快適に旅行できる環境面での整備等、観光施策に関する財源を確保するために、全く新しい“国際観光旅客税法”を創りました。
この“国際観光旅客税法”により徴収した「国際観光旅客税」をもとに、政府は日本国内の観光基盤の充実、強化を図ろうとしているようです。
へぇ。
国内観光の整備のため、ですか。
はい。
海外からの観光客が負担するのなら分かりますけど、なぜ海外へ出国する日本人が負担しなくてはならないのですか?
そうですね。
“観光”という言葉だけに着目してしまうと、そうお考えになることはやむを得ませんね。
ただ、日本人や海外のビジネスマンであっても、出入国の際は必ず航空や港湾の施設を利用します。これらの環境の整備等もこの観光施策には含まれています。制度設計に当たり、様々な面から検討が行われたようですが、最終的には、出入国という行為に着目をすることで広く薄く負担を求め、さらに諸外国での課税事情を勘案した上で、例外を除き、海外からの観光客以外の者も含め、出国時に一度だけ課税する、ということに落ち着いたようですよ。
例外、って誰ですか?
2歳未満の子どもと、この税が施行される前に施行日以降搭乗するエアチケットを購入した人です。
この他にもたとえば一定の要件に該当するトランジット客や、入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づく出国の確認を要さないとされている者、たとえば乗員や政府専用機により出国する者等についても、この「国際観光旅客税」の課税対象者から外れています。
ビジネスマンも、ってことは、弊社の従業員が海外出張したときにも徴収されるんですよね?
ご理解のとおりです。
会社が負担したときの経理処理は、どうなるのですか?
通常の海外渡航費と同様に考えてもらえばいいですよ。
つまり、御社の業務の遂行上必要な海外出張であれば、法人の経費として「旅費」に含めてもらい、従業員個人に対する課税はありません。
他方、御社の業務の遂行上必要でない海外出張は、その従業員への「給与」として取扱うこととなります。
今回は、プライベートの旅行ですから関係ないですけど、今後、海外出張の際にもこの「国際観光旅客税」が出てくるわけですね?
ご理解のとおりです。
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